ストレートネックは「骨を治す」より「筋肉と習慣」。解剖学から見るスマホ首の原因と、あご引き運動

健康

こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。

スマートフォンやパソコンを使ったあと、首や肩がずっしり重い。夕方になると頭が痛くなる。病院や整骨院で「ストレートネックですね」と言われたことがある。そんな方も多いのではないでしょうか。

私のところにも、首や肩のつらさで、10代から60代まで幅広い年代の方が来院されます。

「ストレートネック」と聞くと、「骨がまっすぐになってしまったら、もう治らないのでは」と不安になるかもしれません。今回は、ストレートネック(スマホ首)の原因を解剖学から見ながら、鍼灸院での施術と、自宅でできる運動についてお話します。

ストレートネック(スマホ首)とは?

首の骨には、本来ゆるやかなカーブがある

首の骨は頚椎(けいつい)と呼ばれ、7つの骨が積み重なってできています。横から見ると、本来は前に向かってゆるやかなカーブを描いており、このカーブがクッションのように、頭の重さを分散しています。

カーブが少なくなった状態がストレートネック

このカーブが少なくなり、まっすぐに近づいた状態が、ストレートネックです。正式な病名ではなく、首の骨の並び方の状態を表す言葉です。スマートフォンを見る姿勢で起こりやすいことから、「スマホ首」とも呼ばれています。

頭が前に出るほど、首の負担は増える

人の頭の重さは、4〜6kgほどあると言われています。ボウリングの球くらいの重さです。

頭が体の真上にあるときは骨で支えられますが、頭が前に出ると、首の後ろの筋肉が引っ張って支えなければなりません。首を15度前に傾けると約12kg、45度傾けると約22kgもの負荷が首にかかるという試算もあります。

壁を使ったセルフチェック

壁に背中を向けて立ち、かかと、お尻、肩甲骨を壁につけてみてください。

このとき、後頭部が自然に壁につけば問題ありません。後頭部がつかない、または意識してあごを上げないとつかない場合は、頭が前に出る姿勢がクセになっているかもしれません。

「骨を治す」より「筋肉と習慣」が大切

ストレートネックと言われると、「骨の形を元に戻さなければ」と考えがちです。

しかし、レントゲンで首の骨がまっすぐに見えても、特に症状がない方もいらっしゃいます。首や肩のつらさには、骨の形そのものよりも、頭を支え続けている筋肉の緊張や、毎日の姿勢の習慣が大きく関わっていると考えられています。

つまり、目を向けたいのは「骨」よりも、「筋肉」と「習慣」です。こわばった筋肉をゆるめ、頭が前に出る時間を減らすことが、現実的な対策になります。

スマホ首で負担がかかる筋肉

後頭下筋群(こうとうかきんぐん)

後頭部と首の境目の、深いところにある小さな筋肉の集まりです。頭の細かい動きを調整しており、目の動きとも連動していると言われています。画面をじっと見続けると、この筋肉が緊張し続け、首の付け根の重さや、頭痛、目の疲れにつながることがあります。

僧帽筋(そうぼうきん)

首の後ろから肩、背中にかけて広がる大きな筋肉です。前に出た頭を後ろから引っ張って支えるため、肩こりの原因になりやすい筋肉です。

肩甲挙筋(けんこうきょきん)

首の骨と肩甲骨をつないでいる筋肉です。うつむいた姿勢が続くと、引き伸ばされたまま緊張し、首から肩甲骨の内側にかけてのこりや痛みにつながります。

このように、スマホ首で負担がかかるのは、頭と肩甲骨をつないでいる筋肉です。肩甲骨については、こちらの記事で詳しくお話しています。

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鍼灸院での施術

来院される方は10代から60代まで

スマホ首の患者さんの年齢層は幅広く、10代から60代までいらっしゃいます。原因も、ゲーム、仕事、育児などさまざまです。

長時間ゲームをする方、パソコンに向かうお仕事の方、赤ちゃんを抱っこして下を向く時間が長い方。年代や生活は違っても、「うつむいた姿勢が長く続く」という点は共通しています。

育児中の首や肩の重さについては、こちらの記事でお話しています。

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肩甲骨と頭に関係する筋肉への鍼通電

施術では、後頭下筋群や僧帽筋、肩甲挙筋など、肩甲骨と頭に関係している筋肉にアプローチしています。

主に使っているのは、鍼に微弱な電気を流す鍼通電(パルス)です。筋肉の緊張をゆるめることと、血流を促すことを目的に行っています。

東洋医学的な視点から

同じ姿勢で巡りが滞る

東洋医学には、「通じざれば則ち痛む」という考え方があります。気(き)や血(けつ)の巡りが滞ると、痛みやこりが生じるという意味です。同じ姿勢を長く続けることは、首や肩の巡りを滞らせる大きな原因と考えられています。

目の使いすぎと「肝」「筋」

東洋医学では、目は五臓(ごぞう)の「肝(かん)」と深くつながっており、肝は筋(すじ)、つまり筋肉や腱の働きも支えていると考えられています。

画面を見続けて目を酷使すると、肝に蓄えられた血が消耗し、筋がこわばりやすくなるという考え方です。スマートフォンで目を使いすぎることと、首や肩のこりが、東洋医学ではひとつながりのものとして捉えられています。

目の疲れについては、こちらの記事でお話しています。

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首の後ろのツボ

首の後ろには、首こりや目の疲れによく用いられるツボがあります。ちょうど後頭下筋群のあたりにあるツボです。

  • 天柱(てんちゅう) — 首の後ろの髪の生え際で、中央の太い筋肉の外側のくぼみ
  • 風池(ふうち) — 天柱から指1本分ほど外側の、少し上にあるくぼみ。耳の後ろの骨と、首の筋肉の間にあります

両手で頭を包むように持ち、親指をツボに当てて、頭の重さを親指に預けるようにゆっくり押します。心地よい強さで5秒ほど、3回を目安にしてください。

自宅でできるセルフケア

あご引き運動(チンタック)

患者さんにお伝えしているのが、あごを引く運動(チンタック)です。寝る前や、仕事などの合間に行っていただいています。

  1. 背すじを伸ばして、正面を向く
  2. あごに指を当て、あごを水平に、まっすぐ後ろへ引く(二重あごを作るイメージ)
  3. 首の後ろが伸びるのを感じながら、5秒ほど保つ
  4. ゆっくり戻す。これを10回ほど繰り返す

下を向いたり、あごを上げたりせず、頭を後ろへスライドさせるのがポイントです。前に出た頭を、体の真上に戻す練習になります。痛みや腕のしびれが出る場合は、すぐに中止してください。

スマホ・パソコンの位置と時間を見直す

  • スマートフォンは、できるだけ目の高さに近づけて持つ。持っている腕のひじを、もう片方の手で支えると楽です
  • パソコンの画面は、上の端が目の高さにくるくらいに調整する
  • 30分から1時間に一度は、立ち上がる、伸びをするなどして姿勢を変える

胸を開き、肩甲骨を動かす

頭が前に出る姿勢では、肩も前に巻き込みやすくなります。両手を後ろで組んで胸を張る、肩を大きく回すなど、胸を開いて肩甲骨を動かす運動を取り入れてみてください。

首の後ろを温める、枕を見直す

蒸しタオルや入浴で首の後ろを温めると、筋肉がゆるみやすくなります。

また、高すぎる枕は、寝ている間も首が前に曲がった状態を作ってしまいます。仰向けに寝たときに、あごが引けすぎず、自然に呼吸ができる高さが目安です。

避けたいこと

  • 首を勢いよく回す、ボキボキ鳴らす
  • 強すぎるマッサージや、痛みを我慢してのストレッチ

首には大切な神経や血管が通っています。強い刺激は、かえって筋肉や組織を傷めることがあるため、避けてください。

悪化した場合や心配な場合

次のような場合は、首の神経が圧迫されている可能性などもあるため、早めに整形外科を受診してください。

  • 腕や手にしびれがある、力が入りにくい、物をよく落とす
  • 箸が使いにくい、ボタンがかけにくい、歩きにくい、足がもつれる
  • 首を後ろに反らすと、腕に痛みやしびれが走る
  • 転倒や事故のあとから首が痛い
  • じっとしていても痛む、痛みで夜眠れない
  • 数週間たっても改善しない

また、今までに経験したことのない激しい頭痛、発熱を伴う首の痛み、強いめまいや吐き気 がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

朝起きたら首が回らない「寝違え」については、こちらの記事でお話しています。

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まとめ

ストレートネック(スマホ首)は、首の骨のカーブが少なくなった状態です。ただ、つらさの原因は、骨の形そのものよりも、頭を支え続けている筋肉の緊張と、うつむいた姿勢の習慣にあると考えられています。

後頭下筋群や僧帽筋、肩甲挙筋など、頭と肩甲骨をつなぐ筋肉をゆるめ、あご引き運動や、スマートフォンの持ち方の見直しで、頭が前に出る時間を減らしていきましょう。症状や体の状態には個人差があります。しびれなどの気になる症状がある場合は、我慢せず整形外科を受診してください。

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