こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
「お灸って熱そう」「跡が残りそう」「そもそも本当に効くの?」お灸に興味はあっても、そんなイメージから一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
私も臨床や家庭で、冷えや胃の不調、月経痛、逆子など、さまざまな症状にお灸を使ってきました。今回は、お灸の種類と効果、研究でわかっていること、鍼灸院でお灸をよく使う症状、そして自宅で安全にお灸を始める方法についてお話します。
鍼灸そのものの基本については、こちらの記事でお話しています。

お灸とは?
もぐさを燃やして、ツボを温める施術
お灸は、蓬(よもぎ)の葉から作る「もぐさ」を燃やし、その熱でツボを温める施術です。鍼と同じく、国家資格を持つ「きゅう師」が行います。
お灸の種類
- 直接灸(ちょくせつきゅう) — 皮膚の上で直接もぐさを燃やすお灸。刺激が強く、現在は行われる機会が少なくなっています
- 台座灸(だいざきゅう) — 小さな台座の上でもぐさを燃やすお灸。熱が穏やかで、市販のお灸の多くがこのタイプです
- 棒灸(ぼうきゅう) — 棒状に固めたもぐさに火をつけ、皮膚から離してかざして温めます
- 箱灸(はこきゅう) — 木の箱の中でもぐさを燃やし、お腹や背中など広い範囲をじんわり温めます
- 火を使わないお灸 — シールのように貼って温めるタイプ。火の心配がなく、手軽に使えます
今の鍼灸院や自宅でのお灸は、皮膚との間に台座やすき間をおくものが中心です。熱さは「じんわり温かい」程度に調整し、跡が残ることはほとんどありません。

鍼との違い
鍼は、細い鍼を刺して、筋肉や神経に刺激を与える施術です。一方のお灸は、刺さずに「温める」施術です。お灸は温める力が得意なことに加えて、市販のものを使えば自宅でもセルフケアとして取り入れやすいのが特徴です。
お灸の効果 — わかっていること・まだわからないこと
温熱刺激で巡りを促すと考えられている
お灸の温かい刺激は、皮膚や筋肉の血流を促し、体をリラックスさせることにつながると考えられています。ただし、お灸がどのように体に働きかけているのか、その仕組みはまだ十分には解明されていません。
研究が進んでいる「逆子のお灸」
お灸の中でも、比較的研究が多いのが、逆子(さかご)に対するお灸です。足の小指にある「至陰(しいん)」というツボを温めるもので、海外の研究をまとめた報告(コクランレビュー)では、通常のケアにお灸を加えることで、逆子のまま生まれる方が減る可能性があるとされています。一方で、帝王切開が減るかどうかははっきりしていません。

そのほかの症状は、まだ研究の途中
冷えや月経痛、胃腸の不調などに対しても研究は進められていますが、はっきりとした結論を出せるほどの研究は、まだ十分ではありません。
そのため、お灸は「病気を治すもの」というより、「体を温め、巡りを整えるための施術・セルフケアの一つ」と考えるのがよいでしょう。
東洋医学から見たお灸 — 「温めて補う」のが得意
お灸が向いている体質
東洋医学では、お灸は「温めて補う」のが得意だと考えられています。体が冷えやすい、疲れやすい、体を温める力が足りないといったタイプの方に向いているとされます。「冷えは万病のもと」という言葉があるように、冷えを取ることを大切にする東洋医学にとって、お灸は欠かせない施術です。

向いていないこともある
反対に、のぼせや炎症、発熱など、体に熱がこもっているときには、お灸で温めることが合わない場合があります。風邪でも、のどの痛みと熱っぽさが強いタイプは、温めすぎないほうが良いと考えられています。
鍼灸院でお灸をよく使う症状
ここからは、これまでのブログでもお話してきた、私が臨床でお灸を使っている症状を紹介します。詳しくは、それぞれの記事もご覧ください。
冷え・寝つきの悪さ
足元が冷えて寝つきが悪い方には、足元を温めるためにお灸をすることが多いです。眠りのためには、かかとの中央にある「失眠(しつみん)」というツボを主に使います。自宅では、火を使わないお灸をおすすめしています。
季節の変わり目のだるさ
寒暖差でだるさや不調を訴える方には、箱灸でお腹や背中を温めたり、三陰交(さんいんこう)・太渓(たいけい)・足三里(あしさんり)などにお灸をしたりします。
胃の不調
胃の不調がある方には、足三里や三陰交にお灸や鍼をし、お腹まわりは箱灸で温めることが多いです。
月経痛
月経時の痛みが強かった私の妻には、三陰交と血海(けっかい)に鍼とお灸をしていました。
風邪のひき始め
私自身、風邪のひき始めには、首の後ろの大椎(だいつい)を温めたり、手の合谷(ごうこく)にお灸をしたりすることがあります。ゾクゾクと寒気がするタイプの風邪のときです。
膝の痛み
膝の痛みには、膝のまわりの内膝眼(ないしつがん)や鶴頂(かくちょう)などに、鍼やお灸をしています。慢性的な膝の痛みには、温めることも大切です。
逆子
逆子の患者さんには、至陰(しいん)と三陰交を中心に、足元を温めるようにお灸をしました。至陰は、足の小指の爪の生え際の外側にあるツボです。
施術の前には、通っている産院に確認していただきました。そのうえで、セルフケアとして足元を温めることや、自宅でお灸をすることをアドバイスしました。
なお、三陰交は、一般的には妊娠中は刺激を避けたほうがよいとされるツボです。逆子のお灸では、鍼灸師が体の状態を見ながら、産院の確認のもとで使うことがあります。妊娠中の方は、ご自身の判断でお灸をせず、必ず産院と鍼灸師に相談してください。自宅でお灸をする場合も、施術者に教わったツボと方法で行ってください。

自宅でお灸を始めるには
初めてなら、台座灸か火を使わないお灸から
初めての方は、熱さが穏やかな台座灸や、火を使わないお灸から始めるのがおすすめです。ドラッグストアや通販で手に入ります。
やり方と、熱いと感じたときの対処
- 使う前に、商品の説明書をよく読む
- ツボにお灸を置き、火をつける(火を使わないお灸は貼る)
- じんわり温かくなってくるのを感じる
- 「熱い」と感じたら、我慢せずにすぐ外す
同じ場所に何度も続けて行わないようにしましょう。火を使うお灸は、換気をし、近くに燃えやすいものを置かず、使い終わったら火が消えたことを必ず確認してください。

お灸をしてはいけない場所・タイミング
- 顔、粘膜、傷や湿疹、炎症がある場所
- 発熱しているとき、体調がすぐれないとき
- 食事やお風呂の直前・直後、お酒を飲んだあと
- 糖尿病などで皮膚の感覚が鈍くなっている方は、やけどに気づきにくいため、医師に相談してから
- 妊娠中の方は、自己判断で行わず、産院や鍼灸師に相談してから
「灸あたり」と、やけどしたときの対処
お灸のあとに、体がだるくなったり、疲れを感じたりすることがあります。これは「灸あたり」と呼ばれ、多くは数時間から1日ほどで落ち着くと言われています。強く出た場合や続く場合は、お灸を控えてください。
もしやけどをしてしまったら、すぐに流水で冷やしてください。水ぶくれはつぶさないようにしましょう。
気をつけたい場合・受診の目安
お灸は、医療機関での治療の代わりになるものではありません。次のような場合は、医療機関を受診してください。
- やけどがひどい、水ぶくれが大きい、赤みや痛みが続く、化膿している(皮膚科へ)
- お灸を続けても症状が変わらない、悪化している
- 逆子と言われている、妊娠中で体調に不安がある(まずは産院へ)

まとめ
お灸は、もぐさの熱でツボを温め、体の巡りを整えることを目的とした施術です。今のお灸は熱さが穏やかで、跡が残ることもほとんどありません。逆子のお灸のように研究が進んでいる分野がある一方で、まだ研究の途中の症状も多くあります。
東洋医学では、お灸は「温めて補う」のが得意です。冷えや胃の不調、月経痛など、温めることが助けになる症状に、鍼灸院でも自宅でも取り入れてみてください。ただし、体質や症状には個人差があります。不安なことがあれば、鍼灸師や医師に相談してください。
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