前が痛いか、横が痛いか、お尻が痛いか。股関節の痛む場所で見えてくる原因と、鍼灸師がすすめるケア

健康

こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。

椅子から立ち上がるとき、歩き始めに、脚の付け根がズキッと痛む。靴下を履いたり、足の爪を切ったりするのがつらくなってきた。横向きに寝ると、腰の横が痛む。そんな股関節の不調を感じていませんか?

股関節の痛みは、「股関節のどこが痛むか」によって、考えられる原因が変わってきます。今回は、痛む場所から考える股関節の痛みの原因と、日常生活に表れるサイン、自宅でできるケア、そして受診の目安についてお話します。

股関節はどんな関節?

股関節は、太ももの骨(大腿骨〈だいたいこつ〉)の先にある丸い部分が、骨盤のくぼみにすっぽりとはまり込んでできている関節です。

上半身の体重を支えながら、立つ、歩く、座る、しゃがむなど、日常のほとんどの動作に関わっています。それだけに、負担がかかりやすい関節でもあります。

股関節の痛みは「痛む場所」で原因が違う

前(脚の付け根の奥)が痛む

股関節そのものに原因がある痛みは、脚の付け根の奥(鼠径部〈そけいぶ〉)に出ることが多いと言われています。

代表的なのが、関節の軟骨がすり減る変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)です。そのほか、関節のふちにあるクッションが傷つく股関節唇(こかんせつしん)損傷や、背骨と脚の付け根をつなぐ腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉の緊張などが関わることもあります。

外側(太ももの付け根の横)が痛む

太ももの付け根の外側には、骨の出っ張り(大転子〈だいてんし〉)があります。このあたりが痛む場合は、お尻の横の筋肉(中殿筋〈ちゅうでんきん〉)やその腱、まわりの組織の炎症などが考えられます。横向きに寝ると痛む、階段を上るときに痛むといった特徴があると言われています。

後ろ(お尻)が痛む

お尻の痛みは、股関節だけでなく、腰からきていることもあります。腰の神経が圧迫されて起こる坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)や、お尻の深いところにある梨状筋(りじょうきん)という筋肉の緊張などが考えられます。お尻から脚にかけてのしびれについては、こちらの記事でお話しています。

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なお、痛む場所はあくまで目安です。いくつかの原因が重なっていることもあるため、自己判断はせず、整形外科で確認してもらうことをおすすめします。

「股関節の痛み?膝?腰?」痛む場所を取り違えることも

股関節の痛みは、ほかの場所の痛みと間違えやすいのも特徴です。

  • 股関節が原因なのに、膝が痛く感じる — 股関節の痛みが、太ももの前から膝のあたりに広がって感じられることがあります
  • 腰が原因なのに、股関節が痛く感じる — 腰の病気で、お尻や脚の付け根に痛みが出ることがあります

「膝が痛いと思っていたら、実は股関節だった」ということもあるのです。膝の痛み、腰の痛みについては、それぞれこちらの記事でお話しています。

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いちばん多い原因、変形性股関節症

軟骨がすり減る病気。女性に多い

変形性股関節症は、股関節のクッションである軟骨がすり減り、痛みや動かしにくさが出る病気です。日本人の股関節の痛みの原因として最も多いとされ、女性に多いと言われています。

初めは、立ち上がりや歩き始めに痛みを感じ、しばらく動くと楽になることが多いとされています。進むにつれて、長く歩けなくなったり、じっとしていても痛んだりするようになることがあります。

骨盤のくぼみが浅い「臼蓋形成不全」

日本では、変形性股関節症の背景に、骨盤側のくぼみ(臼蓋〈きゅうがい〉)が生まれつき浅い「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」がある方が多いとされています。くぼみが浅いと、太ももの骨を支える面積が小さくなり、関節の一部に負担が集中しやすくなるためです。臼蓋形成不全があっても、若いうちは痛みがないことも多いと言われています。

日常動作に表れるサイン

次のような動作がつらくなってきたら、股関節からのサインかもしれません。

  • 立ち上がりや歩き始めに、脚の付け根が痛む
  • 靴下を履く、足の爪を切るのがつらい
  • あぐらがかきにくい
  • 車の乗り降りがしにくい
  • 長く歩くと痛む、歩ける距離が短くなってきた

東洋医学的な視点から

体の横を通る「胆経」

東洋医学では、体の横側を、足少陽胆経(あししょうようたんけい)という経絡(けいらく)が通っていると考えられています。この胆経は、お尻の外側から股関節の外側を通って、脚の外側へと下りていきます。股関節の痛みに用いられるツボにも、この胆経のツボが多くあります。

筋と骨をつかさどる「肝」と「腎」

東洋医学では、筋(すじ)は「肝(かん)」、骨は「腎(じん)」がつかさどると考えられています。年齢とともに関節が痛みやすくなるのは、肝や腎の衰えと関係があると考えられています。

冷えや湿気で悪化する痛み

寒い日や雨の日に股関節が痛むという方もいらっしゃいます。東洋医学では、冷えや湿気で悪化する関節の痛みを「痺証(ひしょう)」と呼び、気(き)や血(けつ)の巡りが滞っている状態と考えます。慢性的な痛みには、温めることが助けになると考えられています。

自宅でできるセルフケア

ここで紹介する運動は、痛みが出ない範囲で行ってください。痛みが強くなる場合はすぐに中止し、変形性股関節症などの診断を受けている方は、医師や理学療法士の指示を優先してください。

お尻の横の筋肉を鍛える(クラムシェル)

お尻の横の中殿筋は、歩くときに骨盤を安定させる大切な筋肉です。

  1. 横向きに寝て、両膝を軽く曲げる
  2. かかとをくっつけたまま、上の膝をゆっくり開く
  3. ゆっくり閉じる。これを10回ほど繰り返し、反対側も行う

脚の付け根の前を伸ばす

  1. 片膝立ちになる(前の足は膝を90度に曲げる)
  2. 背すじを伸ばしたまま、体をゆっくり前に移動させる
  3. 後ろ側の脚の付け根の前が伸びるのを感じながら、20〜30秒保つ

膝をつくのが痛い場合は、膝の下にクッションを敷いてください。

お尻を伸ばす

  1. 仰向けに寝て、両膝を立てる
  2. 片方の足首を、反対側の膝の上にのせる
  3. 下の脚の太ももを両手で抱え、胸のほうへゆっくり引き寄せる
  4. お尻が伸びるのを感じながら、20〜30秒保つ

股関節に負担をかけない日常の工夫

  • 長時間同じ姿勢でいない
  • 体重を適正に保つ(体重が増えると、股関節への負担も増えます)
  • 深くしゃがみ込む、あぐらや横座りを長く続けることは控える
  • 階段では手すりを使い、必要に応じて杖も活用する
  • クッション性のある、足に合った靴を選ぶ
  • 慢性的な痛みやこわばりは、湯船などで温める(急に腫れたり熱を持ったりした場合は冷やす)

股関節の痛みによく用いられるツボ

  • 環跳(かんちょう) — お尻の外側。横向きに寝て脚を曲げたとき、太ももの付け根の外側の骨の出っ張りと、お尻の割れ目の上端を結んだ線の、外側から3分の1あたり
  • 居髎(きょりょう) — 腰骨の前の出っ張りと、太ももの付け根の外側の骨の出っ張りの中間
  • 陽陵泉(ようりょうせん) — 膝の外側の下にある、小さな骨の出っ張りの前下のくぼみ。「筋の会穴(えけつ)」とも呼ばれ、筋肉や腱の不調によく用いられます

心地よい強さで5秒ほど押し、ゆっくり離します。これを3回ほど繰り返してください。強く押しすぎないよう注意しましょう。

悪化した場合や心配な場合

次のような場合は、すぐに医療機関を受診してください。

  • 転倒したあとから、立てない、歩けない(特に高齢の方は、太ももの骨の付け根の骨折の可能性があります)

次のような場合は、早めに整形外科を受診してください。

  • 発熱とともに、股関節が痛む、腫れている、熱を持っている
  • お子さんが足を引きずる、股関節や膝を痛がる
  • じっとしていても痛む、夜も痛む
  • 歩ける距離がだんだん短くなっている
  • 脚の長さに左右差が出てきた気がする
  • 足のしびれや、力が入りにくい感じがある
  • 痛みが数週間続いている、靴下や爪切りがつらくなってきた

また、ステロイドの薬を使っている方や、お酒をよく飲む方は、太ももの骨の付け根の血流が途絶える病気(大腿骨頭壊死症〈だいたいこっとうえししょう〉)が起こりやすいとされています。股関節に痛みがある場合は、早めに整形外科で相談してください。

まとめ

股関節の痛みは、前(脚の付け根の奥)、外側(太ももの付け根の横)、後ろ(お尻)のどこが痛むかで、考えられる原因が変わります。また、股関節の痛みが膝に広がったり、腰の痛みが股関節に出たりと、痛む場所を取り違えやすいのも特徴です。

靴下が履きにくい、歩き始めが痛いといった日常のサインに気づいたら、無理をせず整形外科で原因を確認してもらいましょう。そのうえで、痛みの出ない範囲で股関節まわりの筋肉を整えることが、股関節を守ることにつながると考えられています。症状には個人差があります。

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