こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
布団に入っても足先が冷たくて、なかなか寝つけない。靴下を重ねて履いても、カイロを貼っても、芯から温まった気がしない。そんなお悩みはありませんか?
これから寒くなる季節は、冷えのご相談が増えてきます。今回は、冷え性の原因と、鍼灸院で行っているお灸、そして自宅でできるケアについてお話します。

冷え性とは?なぜ冷えるのか
冷え性は病名ではない
冷え性は、西洋医学では病名ではありません。検査をしても特に異常がないのに、手足や腰などが冷えてつらい状態のことを指します。
体温を保つ3つの仕組み
私たちの体は、次の3つの働きによって体温を保っています。
- 熱を作る — 筋肉を動かしたり、食べたものをエネルギーに変えたりして熱を生み出す
- 熱を運ぶ — 血液が、作られた熱を全身に届ける
- 熱を逃がさない — 寒いときは、自律神経(じりつしんけい)の働きで皮膚の血管を縮め、熱が外に逃げるのを防ぐ
このうちのどれかがうまく働かないと、体は冷えやすくなると考えられています。
靴下を重ねても温まらない理由
靴下の重ね履きやカイロは、3つのうち「熱を逃がさない」ための対策です。
もちろんこれも大切ですが、そもそも熱を「作る」力や「運ぶ」力が落ちていると、外側から覆っても温まりにくくなります。筋肉量が少ない、食事の量が足りない、座りっぱなしで血の巡りが悪い、といった方は、温めることとあわせて、作る・運ぶ力を高めることが大切です。
冷えのご相談は、女性が9割
女性に冷えが多い理由
私のところに冷えを訴えて来られる患者さんは、女性と男性の割合が9対1くらいです。
患者さんには、女性に冷えが多い理由として、筋肉量の違いとホルモンの影響をお伝えしています。熱を作る筋肉の量が男性に比べて少ないことに加えて、月経や更年期などでホルモンバランスが変化すると、血管の広がり具合を調節している自律神経にも影響が出やすいと言われています。
一番多いのは足元、次に腰や肩甲骨まわり
冷える場所として特に多いのが足元で、その次に、腰や肩甲骨まわりの冷えを訴える方が多くいらっしゃいます。

冷えると痛みが出ることも
冷えは、痛みにもつながることがあります。患者さんの中には、肩の関節が冷えると痛みが出てくる方もいらっしゃいます。80代の女性の方で、肩を温めていると調子がいいとおっしゃっています。
体が冷えると血の巡りが悪くなり、筋肉がこわばって、痛みを感じやすくなることがあると考えられています。肩の痛みについては、こちらの記事でもお話しています。

足が冷えると寝つきが悪くなる理由
冷えを訴える患者さんの中には、寝つきが悪いという方もいらっしゃいます。
人は眠りに入るとき、手足の皮膚の血管を広げて熱を外に逃がし、体の内部の温度を下げることで、自然と眠くなると言われています。赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのも、このためです。
ところが、足が冷えて血管が縮んだままだと、熱をうまく逃がすことができず、寝つきにくくなると考えられています。寝る前に足元を温めることには、血管を広げて眠りに入りやすくする意味があるのです。
睡眠の質を高めるツボについては、こちらの記事でお話しています。
東洋医学的な視点から
冷えは「未病」のサイン
東洋医学では、病気とまではいえないけれど健康でもない状態を「未病(みびょう)」と呼びます。冷えはその代表的なサインとして、昔から重視されてきました。
また、「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」という言葉があるように、頭は涼しく、足元は温かく保つことが健康の基本だと考えられています。
温める力の不足と、巡りの滞り
東洋医学では、冷えを主に次のような状態として捉えます。
- 陽虚(ようきょ) — 体を温めるエネルギーが不足している状態。寒がりで疲れやすい方に多いとされています
- 瘀血(おけつ) — 血(けつ)の巡りが滞っている状態。足は冷えるのに上半身はほてる、肩こりや月経痛があるといった特徴が見られることがあります
先ほどの「熱を作る力」が陽虚に、「熱を運ぶ力」が瘀血に、それぞれ近い考え方です。
冷えはお灸が得意とする分野
お灸は、もぐさを燃やした温かい刺激でツボを温める方法です。温める力を補い、巡りを促すことを目的としているため、冷えはお灸が特に得意とする分野だと言えます。

鍼灸院で行っている施術
足元を温めるお灸
寝つきが悪いという方には、足元を温めるために、お灸をすることが多いです。
眠りのためのツボ「失眠(しつみん)」
眠りのために主に使っているのが、失眠というツボです。
場所:足の裏、かかとの真ん中。
「眠りを失う」と書く名前の通り、寝つきの悪さなど、眠りに関わる不調によく用いられるツボです。足の裏にあるので、足元を温めるのにも適しています。

そのほか、冷えには、三陰交(さんいんこう)や太渓(たいけい)、足三里(あしさんり)といった足のツボもよく用いられます。
自宅でできるセルフケア
火を使わないお灸を活用する
自宅でできるお灸として、患者さんには火を使わないお灸「太陽」をおすすめしています。シールのように貼るタイプで、火を使わずにじんわりと温めることができます。
使うときは、次の点に注意してください。
- 使用前に、商品の説明書をよく読む
- 熱いと感じたら、我慢せずにすぐはがす
- 寝ている間は使わない(低温やけどを防ぐため)
- 肌が弱い方、糖尿病などで皮膚の感覚が鈍くなっている方は、使用前に医師に相談する
- 妊娠中の方は、お腹や腰、三陰交への使用を避け、医師に相談する
温まり方の感じ方には個人差があります。
熱を作る
- 朝食を抜かず、3食しっかり食べる
- 筋肉の材料になるたんぱく質を意識してとる
- かかとの上げ下げやスクワット、ウォーキングなどで、下半身の筋肉を使う
タンパク質については、こちらの記事でお話しています。

熱を運ぶ
- シャワーで済ませず、38〜40℃のお湯に10〜15分ほどつかる
- 長時間座りっぱなしにならないよう、ときどき立って歩く、足首を回す
- きつい靴下や下着で体を締めつけない
熱を逃がさない
- 首、手首、足首を冷やさない
- 腹巻きなどでお腹を温める
- 靴下は重ねすぎて締めつけないようにし、レッグウォーマーで足首を覆う
寝る前の工夫
寝つきが悪い方は、寝る前に足湯をする、湯船につかるなどして、足元を温めてから布団に入ってみてください。
電気毛布や湯たんぽは、布団を温めておくのに使い、寝るときには切るか、体から離すのがおすすめです。つけたまま寝ると、低温やけどや、汗による脱水につながることがあります。
悪化した場合や心配な場合
冷えの背景に、病気が隠れていることもあります。次のような場合は、内科などの医療機関を受診してください。
- 冷えとともに、強いだるさ、むくみ、体重の増加、皮膚の乾燥がある(甲状腺の病気の可能性)
- 立ちくらみや動悸、息切れがある、顔色が悪い(貧血の可能性)
- 寒さで指先が白や紫色に変わる、しびれや痛みがある
- 歩くとふくらはぎが痛くなり、休むと楽になる。足の傷が治りにくい(血管の病気の可能性)
- 手足にしびれや感覚の鈍さがある
- 眠れない状態が続き、日中の生活に支障が出ている
また、片方の手や足だけが急に冷たくなり、痛みや色の変化がある 場合は、すぐに医療機関を受診してください。

まとめ
冷え性は、熱を「作る」「運ぶ」「逃がさない」という3つの働きのどこかがうまくいっていないことで起こると考えられています。外側から温めるだけでなく、食事や運動で熱を作り、お風呂や体を動かすことで巡りを良くすることが大切です。
足が冷えて寝つけない方は、寝る前に足元を温めることから始めてみてください。お灸もその助けになります。ただし、体質や原因には個人差があります。冷えが続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関や鍼灸院に相談してください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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