パソコン作業と育児で腱鞘炎に。鍼灸師が自分の手で実感した原因とおすすめのツボ

健康

こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。

ここ最近、ブログの執筆やデータ入力など、パソコンに向かい時間が一気に増えました。気づけば1日に何時間もキーボードに打ち続けていて、ある朝、手首の親指側に「あれ、動かすと痛いな」という違和感を覚えました。放っておくと徐々に痛みが強くなり、ペットボトルの蓋を開ける、タオルを絞るといった何気ない動作でも痛みを感じるようになってしまいました。

振り返ってみると、原因はパソコン作業だけではなかったと思います。我が家の子供もちょうど抱っこをせがむ時期で、片手で子供を抱えながら家事をすることも多く、手首に負担のかかる姿勢が日常的に積み重なっていました。パソコン作業による同じ動作の繰り返しと抱っこによる手首に負担のかかる姿勢の維持この二つが重なったことで症状が一気に表面化したのだと思います。

これは典型的な腱鞘炎(けんしょうえんの症状です。患者さんには日頃から「手の使いすぎに注意してください」とお伝えしていた立場なのですが、いざ自分の体で体験すると、その不便さと辛さを改めて実感しました。今回はこの経験を踏まえならが、腱鞘炎がなぜ起こるのか、そして施術でも使うおすすめのツボについてお話しします。

※これから紹介するツボはあくまで臨床上よく使うツボなので絶対に治るとは限りません。本記事では、私がこれまでの臨床経験や専門学校で培った知識をベースに、現代のセルフケアでも広く活用されている代表的なツボを紹介します。

腱鞘炎とは

腱鞘炎とは、筋肉と骨をつなぐ「腱」とその腱を包んで滑らかに動かすための「腱鞘(けんしょう)」というトンネルの組織の間で、摩擦や炎症が起こる状態です。

指や手首を動かすたびに、腱は腱鞘の中を通って滑るように動いています。しかし、同じ動作を繰り返し続けると、この腱と腱鞘の間に摩擦が蓄積し、炎症を起こして腫れや痛みが生じます。腫れた状態でさらに動かし続けると、悪化のサイクルに陥りやすくなります。

代表的な症状

手首や指の付け根を動かすと痛みがある

特定の動作(物をつかむ、瓶の蓋を開けるなど)で痛みが強くなる

腫れや熱感を伴うことがある

進行すると指を動かす時に引っ掛かるような感覚(ばね指)が出ることもある

私の場合は、親指を動かしたときや、手首を反らしたときに痛みが強く出るタイプで、これは「ドケルバン病」とも呼ばれる、親指の付け根の腱鞘炎に近い症状でした。

腱鞘炎はなぜ起こるのか

同じ動作の繰り返し

パソコン作業、スマートフォンの操作、家事、育児(抱っこなど)、楽器演奏やスポーツなど特定の指や手首の動きを繰り返す動作は、腱鞘炎の主な原因になります。私の場合は、キーボード入力と手技の時に手首にかかる負担の繰り返しが大きな要因だったと感じています。

手首や指への負担のかかる姿勢

パソコン作業では、手首を反らせた状態が長時間続きやすく、これが腱への負担を増やします。キーボードやマウスの位置、椅子の高さなど、姿勢全体が影響することもあります。

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育児中の「抱っこ」による負担

来院される患者さんの中にも、育児中の方の腱鞘炎は非常に多くみられます。赤ちゃんの抱っこは、片手や手首を反らせた状態をキープする動作の連続で、想像以上に手首への負担が大きい動作です。特に首がすわる前の時期は、頭を支えながら抱きかかえる姿勢が続くため、手首や親指の付け根に負担が集中しやすくなります。

私自身、今回の子供の抱っこが要因の一つになった経験から、育児中の患者さんの訴えがより実感を持って理解できるようになりました。授乳やおむつ替え、抱っこでの寝かしつけなど、育児には手首を酷使する場面が数えきれないほどあり、育児中の腱鞘炎は母指(ぼし)CM関節とも呼ばれ、親指の付け根を中心に痛みが出やすいのが特徴です。

ホルモンバランスの変化

妊娠中や産後、更年期など、ホルモンバランスの変化する時期は、腱や腱鞘が腫れやすくなり、腱鞘炎を起こしやすいことが知られています。これは、女性ホルモンであるエストロゲンが、腱や腱鞘の状態(潤滑や柔軟性)にも影響を与えているためだと考えられています。

実際に更年期の患者さんからも、「特に何か手を酷使したわけではないのに、急に手首や指が痛み出した」というご相談をいただくことがあります。ホルモンバランスの変化により腱鞘がゆるみやすくなったり、組織の柔軟性が低下したりすることが、こうした症状の背景にあると考えられています。育児中の産後の時期と、更年期はホルモンの変動という点で共通しており、どちらの時期も腱鞘炎が起こりやすいというタイミングとして知っておいていただきたいと思います。

加齢による組織の変化

加齢に伴い、腱や腱鞘の柔軟性が低下することも、発症のリスクを高める要因の一つです。

東洋医学から見る腱鞘炎

東洋医学では、手指や手首の慢性的な痛みは、その部位を通る経絡の気血の巡りが滞った状態として捉えられます。特に、繰り返しの動作によって局所に負担が蓄積すると、その部分の巡りが悪くなり、「不通則痛(ふつうそくつう)」つまり巡りが滞ることで痛みが生じると考えられています。

また、慢性的に体を酷使し続けている状態は、気や血そのものの消耗にもつながりやすく、単に局所を治療するだけでなく、全身の巡りを整えることも回復を助けると考えられています。

おすすめのツボ

陽渓(ようけい)

場所:手首の親指側、親指を反らした時にできる腱と腱の間のくぼみ。

特徴:陽渓は、まさに私が痛めた親指側の腱鞘炎に対してよく使われるツボです。手首を反らす動作に関わる腱の近くに位置しており、局所の巡りを促す作用があるとされています。実際に自分でこのツボを押してみるとはっきりと圧痛がを感じ、腱鞘炎の状態を実現するポイントでもありました。

セルフケアでの押し方

①親指を軽く反らせ、手首にできる腱の溝を確認する

②その溝の中にあるくぼみを、反対の手の親指で優しく押す

③痛みが強く出る場合は無理をせず、心地よい強さで5秒押して離すを数回繰り返す

手三里(てさんり)

場所:肘を曲げた時にできるシワの外側の溝から、指3本分ほど手首側に下がったところ。

特徴:手三里は、腕や手首の痛み全般に用いられる代表的なツボです。局所である手首・指だけでなく、腕全体の緊張や血流を整える助けになるとされ、腱鞘炎の施術でも合わせて使うことが多いツボです。

セルフケアでの押し方

①肘を曲げ、外側のシワの端から指3本分下の位置を探す

②反対の手の親指で、心地よい強さでゆっくりと押し込む

③5秒押して離すを5回程度繰り返す

セルフケアと予防のポイント

手首を反らせすぎない:パソコン作業では、リストレストなどを使い、手首がまっすぐの状態を保てるよう工夫する

こまめに休暇をとる:1時間に一度は手を休める、軽くストレッチするなど、連続使用の時間を減らす

冷やす、温めるの使いわけ:急性的な痛みや熱感がある時期は冷やし、慢性的な痛みには温めて血流を促す

痛みが強い動作を避ける:痛みを我慢して同じ動作を続けると悪化しやすいため、可能な範囲で負担のかかる動作を控える

私自身も、この経験をきっかけにパソコン作業の合間にストレッチを挟む習慣をつけるようになりました。

まとめ

腱鞘炎は、パソコン作業や家事、育児など、日常のさまざまな場面で起こりうる身近な不調です。自分自身が経験してみて、何気ない動作にも支障が出る辛さを改めて実感しました。

陽渓手三里は、自宅でも気軽にセルフケアできるツボです。痛みが軽いうちにケアを始めることが、悪化を防ぐポイントになります。痛みが強く続く場合や、腫れがひどい場合は、無理をせず医療機関や鍼灸院に相談することをおすすめします。

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