こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
以前、仕事のストレスが続いているという患者さんが来院されました。主訴は肩こりと頭痛だったのですが、話を伺っていくと、それだけでなく「なんだかずっとイライラが抜けない」「ため息が増えた」「寝つきが悪い」といった悩みも抱えていることがわかりました。お腹を触診すると、肋骨のあたり、脇腹のラインに沿って張りと硬さがあり、これは東洋医学でいう「肝(かん)」の状態が乱れているサインでした。
その部分を中心にツボへの施術を行なっていくと、施術中に大きなため息をつかれ、「体が軽くなった気がします」と表情も和らいで行かれたのが印象的でした。後日「あれから寝つきが良くなったとお話しくださり、ストレスと肝の関係を改めて実感した症例でした。
今回は、この患者さんのケースを踏まえながら、東洋医学における「肝」というタイプについて、そしておすすめのツボを2つご紹介します。
東洋医学における「肝」とは
東洋医学でいう「肝」は西洋医学の肝臓(消化・解毒を担う臓器)とは少し違う概念です。東洋医学の肝は、主に次の2つの働きを担うとされています。
疏泄(そせつ)作用
気の巡りを調整する働きです。この働きが順調だと、気持ちは穏やかに保たれ、消化機能もスムーズに働きます。しかし、ストレスや怒り、緊張が続くとこの疏泄作用がうまく働かなくなり、気の流れが滞ってしまいます。これを「肝気鬱血(かんきうっけつ)」と呼びます。
蔵血(ぞうけつ)作用
血を蓄え、必要な場所に配分する働きです。肝が十分な血を蓄えられていないと(肝血虚)、目の疲れやかすみ、爪の割れやすさ、女性の場合は月経不順などにつながりやすいとされています。
ストレスで乱れた「肝」のサイン
肝気鬱血タイプの方には、次のような特徴がよく見られます。
・些細なことでイライラしやすい、怒りっぽくなる
・ため息が増える
・喉に何かが詰まっているような違和感がある(いわゆる「梅核気」)
・脇腹や胸のあたりに張りや詰まった感じがある
・生理前になると胸の張りやイライラが強くなる
・寝つきが悪い、夜中に目が覚めやすい
今回来院された患者さんも、まさにこうしたサインが複数当てはまっており、問診と触診を通して「肝気鬱血」の状態にあると判断しました。
肝が乱れる原因
現代社会では、次のような要因が「肝」の疏泄作用を見出しやすいと考えられています。
・慢性的な仕事のストレスやプレッシャー
・怒りや不満を我慢し続ける状態
・長時間のデスクワークによる姿勢の悪化と気の滞り
・睡眠不足や不規則な生活リズム、患者さんの中でも睡眠時間を確保できていない方が多いです
肝は「怒り」の感情と特に結びつきが深いとされ、感情を溜め込みやすい方ほど、この肝気鬱血の状態になりやすい傾向があります。

施術で使うツボ2選
太衝(たいしょう)
場所:足の甲、親指と人差し指の骨が合わさる手前のくぼみ。
特徴:太衝は肝の経絡に属する代表的なツボで、気の巡りを整え、イライラやのぼせを鎮める作用があるとされています。「肝の状態を映す鏡」とも言われるほど、肝の乱れがあるとこの部分に張りや圧痛が出やすく、施術の際にも欠かせないツボの一つです。今回の患者さんにも、このツボにしっかりとした圧痛が見られました。
セルフケアでの押し方
①足の甲側、親指と人差し指の骨の間を、足首に向かってゆっくりなぞる。
②骨が合わさる手前のくぼみを見つけたら、痛気持ちいいと感じる強さで押し込む。
③5秒押して離すを5回程度繰り返す。
④呼吸をゆっくり意識しながら行うと、より効果を感じやすくなります。

期門(きもん)
場所:胸の下、乳頭からまっすぐ下に下ろした線上、肋骨の際にあるツボ。
特徴:期門は「肝」の状態が直接反映されるとされている経穴で、脇腹や胸の張り、詰まったような感覚がある時によく用いられます。今回の患者さんの触診で硬さが見られた部分も、まさにこの期門周辺でした。深い呼吸と合わせて優しく刺激することで、気の滞りを緩める助けになります。
セルフケアでの押し方
①乳頭の真下、肋骨に沿ったラインを指で探す。
②強く押し込むのではなく、手のひら全体で優しく圧をかけるようにする。
③ゆっくり深呼吸をしながら、10秒程度圧をかけて緩める。
④強い痛みがある場合は無理に押さず、優しくさする程度にとどめる。

日常生活で意識したいこと
・感情を溜め込みすぎず、信頼できる人に話す、日記に書き出すなどの発散の方法を持つ。
・軽い運動やストレッチで、体の緊張と一緒に気の滞りをほぐす。私は一日30分ほど自転車を漕ぐようにしています。
・深呼吸の時間を意識的に作る。施術の合間や朝起きた時などに行うことが多いです。
・就寝前はスマートフォンやパソコンから離れ、リラックスする時間を確保する。

まとめ
ストレス社会と言われる現代では、「肝」の状態が乱れやすい方が本当に多いと感じます。今回の患者さんのように、肩こりや頭痛といった体の症状の背景に、実は気持ちの滞りが隠れているケースは少なくありません。
太衝と期門はどちらも自宅でセルフケアしやすいツボです。イライラが続く、ため息が増えた、寝つきが悪いといったサインを感じた時は、ぜひ試してみてください。それでも改善が見られない場合は、鍼灸で全身の気の巡りを見てもらうことも一つの選択肢です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
X(旧Twitter)もやっているのでフォローよろしくお願いします。
X(旧Twitter)アカウント→@shinbitokenn


コメント