こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
先日、育休中のお父さんが来院されました。「朝起きた時に首から肩周りが重だるくて……」というお悩みでした。よくお話を伺うと、育休中で赤ちゃんのお世話をする際に、下を見ることが多く、また抱っこをずっとしているため、首と肩に相当な負荷がかかっていたのです。
最初は「寝違えかな」と思われたそうですが、実は違う原因がありました。今回は、この患者さんの症例を通じて、朝の首肩の重だるさの理由と、鍼灸でのアプローチについてお話します。

朝に首肩が重だるくなる理由は「寝違え」ではない
「朝起きたら首肩が重だるい」という症状は、多くの人が「寝違えた」と思い込みやすいのですが、実はメカニズムが異なります。
寝違えと朝の重だるさの違い
寝違えは、寝ている間に首が変な角度で固まってしまい、朝目が覚めた時に痛みが出る現象です。一方、朝の重だるさは、日中に仕事や育児で首肩に負荷をかけ、その疲労が蓄積したまま寝ている間に筋肉が硬直し、朝に症状として表れるものです。
その患者さんの場合、首は動きますし、強い痛みもないということでした。これは典型的な「朝の重だるさ」で、日中の生活習慣が原因だと考えられました。

なぜ寝ている間に症状が悪化するのか
筋肉は、使い続けるとトリガーポイント(筋肉の硬いしこり)が形成されます。日中、同じ姿勢を続けたり、繰り返し同じ動きをしたりすると、その部位の血流が悪くなり、疲労物質が溜まります。
寝ている間は、一般的には筋肉が休まって回復する時間なのですが、疲労が深い場合、かえって筋肉がこわばったままになることがあります。その結果、朝起きた時に「重だるい」という感覚として現れるのです。

育児動作(下を見る・抱っこ)が首肩に与える影響
この患者さんが育休中であることが、今回の症状の大きな鍵でした。赤ちゃんのお世話には、意外と首肩に負荷をかける動作がたくさんあります。
下を見る動作が僧帽筋・肩甲挙筋に与える負荷
赤ちゃんのおむつ替えや授乳の時間など、どうしても下を見ることが増えます。この動作は、首の後ろから肩にかけての大きな筋肉である僧帽筋(そうぼうきん)と、肩甲骨を持ち上げる肩甲挙筋(けんこうきょきん)に継続的な負荷をかけます。
スマートフォンを見下ろす時のような動作が、繰り返し繰り返し行われるわけです。
抱っこが菱形筋に与える負荷
さらに、赤ちゃんを抱っこし続けることは、肩甲骨を背骨側に引き寄せる菱形筋(りょうけいきん)に大きな負荷をかけます。菱形筋は、抱っこの際に背中を丸めるのを支える筋肉であり、育児中は毎日、何時間も働きっぱなしの状態になってしまうのです。
こうした動作の繰り返しにより、筋肉の疲労が蓄積し、朝の重だるさへとつながっていくのです。
朝の首肩の重だるさに関わる3つの筋肉
この患者さんの症状改善のために、私が施術時に注目した3つの筋肉について説明します。
僧帽筋(そうぼうきん)
首から背中の中央、肩甲骨にかけて広がる大きな筋肉です。肩甲骨を持ち上げたり、肩を後ろに引いたりする動きに関わっています。下を見ることが多いと、この筋肉が引き伸ばされた状態が続き、疲労が蓄積しやすくなります。

肩甲挙筋(けんこうきょきん)
肩甲骨の内側上部から首の骨(頚椎)に付着する筋肉で、肩甲骨を上に持ち上げる役割を担っています。首コリと関連が深く、この筋肉が硬くなると、朝に首全体が重く感じるようになります。

菱形筋(りょうけいきん)
肩甲骨の内側と背骨の間にある筋肉で、肩甲骨を背骨側に引き寄せます。抱っこで背中を丸める動作が多いと、この筋肉に常に緊張が加わり、硬くなりやすいのです。

患者さんの症例 — 鍼通電(パルス)による改善
この患者さんに対して、私は上記の3つの筋肉に対して、鍼通電(はりつうでん)、つまりパルス刺激を用いた施術を行いました。
施術内容と患者さんの反応
僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋に対して鍼を刺し、そこに電気刺激を流すことで、筋肉の深い部分にアプローチしました。施術後、患者さんから「重だるさが8割くらい取れました。首が軽くなった」とのお言葉をいただきました。
この改善は、単なる気のせいではなく、鍼通電が筋肉の血流を劇的に改善し、硬くなった筋肉をほぐす効果があることを示しています。
鍼通電(パルス刺激)がなぜ効くのか
鍼通電は、鍼を刺した部位に電気刺激を与えることで、以下の効果が期待できます。
血流改善による筋肉の回復促進
電気刺激により、筋肉が軽く収縮を繰り返すことになり、その結果として血流が促進されます。血流が良くなると、酸素と栄養が筋肉に供給され、疲労物質が排出されやすくなります。これが、患者さんが感じた「軽さ」につながったのです。

トリガーポイント療法の考え方
筋肉にできた硬いしこり(トリガーポイント)は、周囲の血流を悪くし、痛みやコリを引き起こします。鍼通電は、このトリガーポイントに直接アプローチし、筋肉の過剰な緊張をリセットするのに効果的です。

東洋医学的な視点から
朝の首肩の重だるさは、東洋医学の観点からも興味深い症状です。
東洋医学では、肝は「筋」を主つかさどる(つかさどる)と言われています。つまり、肝の気の流れが悪くなると、筋肉全体のこわばりが生じやすくなるのです。
また、育児による疲労の蓄積は「気血不足」の状態を招きます。気血の流れが悪いと、寝ている間に筋肉の疲労が十分に回復できず、朝に重だるさとして現れるわけです。
鍼灸で気血の循環を改善することで、西洋医学的な血流改善とともに、全身の「気」のめぐりを整え、根本的な回復を促していくのです。
セルフケア — 首を回すストレッチ
患者さんには、自宅でできるセルフケアとして、首を回すストレッチを指導しました。
ゆっくり前屈
首をゆっくり前に倒し、3~5秒かけて元の位置に戻す動きです。僧帽筋を優しく伸ばし、首の後ろの筋肉の緊張を緩めます。
ゆっくり後屈
首をゆっくり後ろに倒し、3~5秒かけて元の位置に戻す動きです。前屈とセットで行うことで、首全体の柔軟性が高まります。
ゆっくり回動き
首を左右にゆっくり回す動きです。肩甲挙筋や僧帽筋全体をほぐすのに効果的です。左右それぞれ5~10回程度、ゆっくり回すとよいでしょう。

実施のタイミング
特に効果的なのは、同じ姿勢が続いた後です。赤ちゃんのお世話で下を見ていた時間が長かったあと、抱っこが続いた後など、そのタイミングで軽く首を動かすことで、筋肉の硬直を防ぐことができます。
朝起きた時に、ベッドの上で軽く行うのもおすすめです。1日3~5回、こまめに実施することが、予防効果を高めます。
注意点
ストレッチを行う際に、痛みが出たらすぐに中止してください。無理に動かすと、かえって筋肉を傷めることがあります。気持ちよい範囲で、ゆっくり動かすことが大切です。
悪化した場合や心配な場合
朝の首肩の重だるさの多くは、生活習慣の改善とセルフケア、そして鍼灸で改善が見られるケースが多いのですが、以下のような場合は医療機関の受診をおすすめします。
- 首肩の痛みが強くなってきた場合
- しびれを伴うようになった場合
- セルフケアと鍼灸を続けても改善が見られない場合
- 頭痛や吐き気を伴う場合
無理に自己判断で対処するのではなく、早めに医師や専門家に相談することが大切です。

まとめ
朝に首肩が重だるくなるのは、寝違えではなく、日中の生活動作による筋疲労が原因であることがほとんどです。特に育児中のお母さん・お父さんは、下を見る・抱っこという繰り返しの動作により、首肩の筋肉に大きな負荷をかけています。
鍼灸で筋肉の血流を改善し、セルフケアのストレッチで予防することで、朝の重だるさから解放される可能性は十分にあります。育児による体への負荷は本当に大きいため、こまめなケアと自分の体を大事にする意識が、長期的な健康につながると感じています。
同じように朝の首肩の重だるさでお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
X(旧Twitter)もやっているのでフォローよろしくお願いします。
X(旧Twitter)アカウント→@shinbitokenn

コメント