こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
先日来院された患者さんは、転職をきっかけに以前よりも歩く時間が格段に増えたとのことでした。「朝起きて最初の一歩がかかとに刺さるように痛い」「歩き始めは辛いけど、少し歩くと落ち着いてくる」というお話を聞いて、典型的な足底筋膜炎(そくていきんまくえん)の症状だとすぐに分かりました。
触診にてみると、土踏まずのアーチがかなり低下しており、足裏全体がベタっと地面についてしまう、いわゆる扁平足に近い状態になっていました。施術と合わせて、この患者さんにはインソール(足底板)の使用をおすすめし、後日「歩くのが楽になりました」と喜んでいただけました。
今回は、このケースを踏まえながら、足底筋膜炎がなぜ起こるのか、そして足のアーチとインソールの重要性についてお話しします。
足底筋膜炎とは
足底筋膜炎は、かかとの骨から足の指の付け根にかけて、足の裏を扇状に覆っている膜のような組織です。歩行やランニングの際、着地の衝撃を吸収し、地面を蹴り出す力を生み出すバネのような役割を果たしています。
この足底筋膜に繰り返し負荷がかかり続けると、かかとの骨に近い部分を中心に炎症が起こり、痛みが生じます。これが足底筋膜炎です。
代表的な症状
・朝起きて最初の一歩、または長時間座った後に立ち上がった瞬間に、かかとに鋭い痛みが走る
・歩き始めると痛みがやや和らぐが、長時間の歩行や立ち仕事の後に再び痛みが強くなる
・かかとの内側を押すと痛みがある
今回の患者さんも、まさにこの「朝の一歩目の痛み」が特徴的でした。
下の赤丸のところが痛くなりやすい部分です。↓

なぜ起こるのか(西洋医学的な視点)
足底筋膜炎の主な原因は、足底筋膜への慢性的な負荷の蓄積です。特に次のような要因が重なると、発症しやすくなるとされています。
・急に歩行量や運動量が増えた(今回の患者さんのケース)
・長時間の立ち仕事や歩行が多い職業
・体重の増加による足への負担増
・ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性の低下
・クッション性の低い靴や、足に合わない靴の使用
・足のアーチ(土踏まず)の低下
この中でも特に見落とされがちなのが、足のアーチの状態です。

足のアーチの重要性
足の裏には、縦方向・横方向にアーチ(弓なりの構造)があり、このアーチが体重を支え、着地の衝撃を分散されるクッションの役割を果たしています。
アーチが正常に機能していると、衝撃が足全体にバランスよく分散されますが、アーチが崩れて扁平足気味になると、衝撃が足底筋膜やかかとの一点に集中しやすくなり、炎症や痛みにつながりやすくなります。
今回の患者さんのように、仕事内容の変化で急激に歩行量が増えた場合、もともとアーチの低下傾向があった方ほど足底筋膜への負担が一気に高まり、発症のきっかけになりやすいと考えられます。

インソールをおすすめした理由
この患者さんには、足底筋膜への直接的な負担を減らす目的で、アーチをサポートするインソールの使用をおすすめしました。
インソールには、次のような効果が期待できます。
・崩れたアーチを支え、正しい位置に近づける
・着地時の衝撃を分散され、足底筋膜への負担を軽減する
・歩行時の足の動きを安定させ、余計な負担のかかり方を防ぐ
既製品のインソールでも一定の効果は期待できますが、症状が強い場合や、足の形に個人差が大き場合は、義肢装具士やフットケア専門店でオーダーメイドのインソールを作ることも選択肢の一つとしてお伝えしています。今回の患者さんは、まず市販のアーチサポート付きインソールから試していただき、症状の変化を見ながら調整していく方針にしました。
東洋医学から見る足底筋膜炎
東洋医学では、かかとや足裏は「腎(じん)」の経絡と関わりが深いとされる部位です。腎は骨や関節、体を支える力の根本を担うと考えられており、腎の力が低下すると、足腰の弱りやかかとの痛みとして現れやすいとされています。
また、慢性的な炎症や痛みは、気血の巡りが滞った状態と捉えることもできます。過度な負荷が蓄積した部分は巡りが悪くなりやすく、それが痛みとして表れると考えられます。
おすすめのツボ「太渓(たいけい)」
場所:足首の内側、内くるぶしとアキレス腱の間にあるくぼみ。
特徴:太渓は腎の経絡に属する代表的なツボで、足腰の張りや慢性的な足の痛みに対してよく用いられます。かかとの痛みにも関連が深いとされ、施術でも足底筋膜炎の患者さんに使うことが多いツボです。
セルフケアでの押し方
①内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみを指で探す
②心地よい強さでゆっくり押し込む
③5秒押して離すを5回程度繰り返す
④入浴後など、血流が良くなっているタイミングで行うと効果的です

セルフケアのポイント
・ふくらはぎ、足裏のストレッチ
朝起きる前や、長時間座った後に立ち上がる前に、足首やふくらはぎを軽く伸ばしておくと、急な負荷を和らげやすくなります。
・クッション性のある靴を選ぶ
特に長時間歩く仕事の方は、靴選びが症状の予防、改善に直結します。
・体重管理
足への負担を減らす観点からも、適正体重の維持は大切です。適正体重は筋肉量や体の状態によっても変わってくるので、わからない場合は専門家に相談してください。
・無理をしすぎない
痛みが強い時期は、可能な範囲で歩行量を調整することも大切です。
※本記事で紹介しているストレッチやツボの効果には個人差があります。痛みが激しい場合や症状が改善しない場合は、決して無理をせず、医療機関を受診してください。

まとめ
「歩くだけなのに、なぜこんなに痛いんだろう」と戸惑う患者さんは少なくありません。しかし、足底筋膜炎の背景には、アーチの状態や靴、歩き方など、いくつもの要因が積み重なっていることがほとんどです。
今回の患者さんのように、インソールで足元を整えることと、鍼灸で筋肉や巡りにアプローチすることを組み合わせることで、症状の改善につながるケースは多くありません。かかとの痛みが続いている方は、一度、自分の足のアーチの状態や靴選びを見直してみてください。
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