こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
「肩を押してもらったら、なぜか腕の方までジーンと響いた」
「一箇所を押しただけなのに、頭の方まで痛みが広がった」
鍼灸の施術を受けた際、こうした感覚を経験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは「トリガーポイント」と呼ばれる筋肉の特定のポイントに関連した、よく見られる反応です。今回は、このトリガーポイントとは何か、どのような治療が行われるのか、そしてどんな方に向いているのかについてお話します。
トリガーポイントとは
トリガーポイントとは、筋肉の中にできる、過敏になった小さなこりのよな部分のことです。医学的には
「筋膜性疼痛症候群」
という病態の中心的な概念のとして位置づけられており、筋肉が過度に緊張したり、繰り返し使われたり、あるいは長期間同じ姿勢が続いたりすることで形成されると考えられています。
トリガーポイントの大きな特徴は、そのポイント自体を押すと、離れた別の痛みや違和感が響く
「関連痛(放散痛)」
を引き起こすことです。例えば、肩や首まわりのトリガーポイントを押すと、頭痛として感じられたり、腕や指先にまで痛みが響いたりすることがあります。この「押した場所とは違う場所に症状が出る」という特徴が、トリガーポイントの診断や治療において重要な手がかりになります。
なぜ関連痛が起こるのか
トリガーポイントができると、その部分の血流が悪化し、痛みを引き起こす物質が蓄積しやすくなります。さらに、脊椎のレベルで、その筋肉からの感覚情報と、離れた部位の感覚情報が近くを通っているため、脳が痛みの発生源を正確に特定できず、離れた場所に痛みがあるかのように感じしまうとこがあると考えられています。
トリガーポイント治療とは
トリガーポイント治療は、こうした過敏になったポイントに直接、鍼を刺入する方法です。
治療の特徴
・硬結(硬くなった筋繊維の帯)の中にある、最も過敏なポイントを的確に探り当てて刺鍼する
・刺鍼によって、筋肉がピクッと反応する「局所単収縮反応」が起こることがあり、これが治療の一つの目安とされる
・単に痛みのある場所だけでなく、関連痛を引き起こしている「本当の原因」の筋肉にアプローチする
東洋医学の「阿是穴」との共通点
実は、東洋医学には古くから「阿是穴(あぜけつ)」という考え方があります。これは、決まった経穴(ツボ)の位置にとらわれず、押して痛みや違和感がある場所そのものを治療点とする考え方で、「阿是(ああ、そこ)」という患者さんの反応がそのまま名前の由来になっています。
現代のトリガーポイント治療は、欧米の医療的な研究から体系化されたものですが、
「押して反応がある場所を治療点とする」
という発想は、この阿是穴の考え方と非常に近く、東洋と西洋、それぞれの医学が経験的に同じような治療原理にたどり着いていたことがうかがえます。
トリガーポイント治療が向いている方
慢性的な肩こり・首のこり
長年の肩こりや首のこりで、マッサージを受けてもすぐに戻ってしまうという方は、表面の筋肉だけでなく、奥にあるトリガーポイントにアプローチすることで、変化を感じやすくなることがあります。
これは長時間同じ姿勢を続けるデスクワークの方は、首・肩・背中まわりにトリガーポイントができやすい傾向でもあります。

緊張型頭痛
首や肩まわりのトリガーポイントが、頭部の関連痛として頭痛を引き起こしているケースは少なくありません。頭痛薬に頼りがちな慢性的な頭痛にお悩みの方にも選択肢の一つになります。

原因がはっきりしない痛み・痺れ
検査をしても骨や神経に異常が見つからないのに、痛みや痺れのような症状が続いている場合は、実はトリガーポイントによる関連痛であるケースがあります。例えば、お尻の筋肉のトリガーポイントが、坐骨神経痛のような足の痛みや痺れを引き起こすこともあります。
スポーツによる筋肉の張り、パフォーマンス低下
特定の動作を繰り返すスポーツ選手は、使いすぎた筋肉にトリガーポイントができやすく、これが可動域の制限やパフォーマンスの低下につながることがあります。

施術を受ける際の注意点
・刺鍼した瞬間や、その後しばらく、独特の重だるさや響くような感覚(いわゆる「得気(とっき)」に近い感覚)を感じることがありますが、これは治療の反応として想定内であることが多いです。
・施術後に一時的に揉み返しのような症状が出ることもあります(以前の記事もご参照ください)
・出血傾向がある方や、施術部位に感染症がある場合は、事前に必ず申告してください
・慢性的な痛みでも、まれに他の病気が背景にあることもあるため、症状が長引く場合は医療機関との連携も大切です

まとめ
トリガーポイント治療は、単に痛い場所を揉みほぐすのではなく、症状の本当の原因になっている筋肉にアプローチをする治療法です。
「マッサージでは変化を感じにくい」
「原因がはっきりしない痛みが続いている」
という方には、特に試していただきたいアプローチの一つです。気になる症状がある方は、一度、施術者に相談してみてください。

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