こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
出産してから、腰がずっと痛い。反り腰になって、立っているのがつらい。「産後は骨盤が開いているから、早く締めないと」と聞いて不安になっている。そんな産後の体のお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
我が家では、妻が帝王切開で出産しました。帝王切開は、普通分娩(経腟分娩)とはまた違う体の回復の仕方をします。
妊娠中や抱っこによる腰痛については、以前こちらの記事でお話しました。
今回は、「出産したあとの体」に目を向けて、産後の腰痛や骨盤まわりの不調がなぜ起こるのか、そして鍼灸院でのケアと、自宅でできることについてお話します。
産後の体はどうなっている?
体が戻るまでの「産褥期(さんじょくき)」
出産後、子宮の大きさや体の状態が、妊娠前に近い状態へ戻っていく期間を「産褥期」と呼びます。一般に、産後6〜8週間ほどと言われています。この時期は、体がまだ回復の途中です。家事や育児を一人で頑張りすぎず、できるだけ体を休めることが大切です。

骨盤を支える靭帯と筋肉がゆるんでいる
「産後は骨盤が開いている」という言葉をよく耳にしますが、骨盤は、いくつかの骨が強い靭帯(じんたい)でしっかりとつながった構造をしています。
妊娠中から出産にかけては、赤ちゃんが通れるように、ホルモンの働きで骨盤まわりの靭帯がゆるみます。このゆるみは産後もしばらく続くと言われており、さらに、妊娠中に引き伸ばされたお腹の筋肉や、骨盤の底を支える筋肉(骨盤底筋〈こつばんていきん〉)も、すぐには元に戻りません。
つまり産後の体は、骨盤そのものよりも、骨盤を支えている靭帯や筋肉がゆるみ、不安定になりやすい状態だと考えられます。そこに、抱っこや授乳など、同じ姿勢が続く育児の負担が加わることで、腰や骨盤まわりに痛みが出やすくなるのです。
帝王切開は、経腟分娩とはまた回復の仕方が違う
帝王切開は、お腹と子宮を切開して赤ちゃんを取り出す出産方法です。そのため、体の回復に加えて、お腹の傷の回復も必要になります。
傷の痛みをかばって前かがみの姿勢が続いたり、お腹に力が入りにくかったりすることもあります。体を動かし始める時期や運動を再開する時期は、医師の指示を確認しながら進めてください。
産後に多い腰痛と反り腰
お腹の筋肉のゆるみと、育児の姿勢
産後の方のお悩みで多いのが、腰痛と反り腰です。
妊娠中に伸びたお腹の筋肉がゆるんだままだと、体を前から支える力が弱くなります。そこに抱っこで赤ちゃんの重みが前にかかると、バランスをとるために腰を反らせる姿勢になりやすく、腰の筋肉に負担が集中してしまいます。
また、授乳やおむつ替えで前かがみになる時間も長く、腰だけでなく、首や肩にも負担がかかります。育児中の首や肩の重さについては、こちらの記事でお話しています。
そのほかに起こりやすい不調
- お尻の上、背骨の左右のくぼみのあたりの痛み
- 歩く、寝返りをうつ、片足で立つときの恥骨(ちこつ)の痛み
- 座ったときの尾骨(びこつ)の痛み
- くしゃみや笑ったときの尿もれ(骨盤底筋のゆるみ)
東洋医学的な視点から
産後は「気血」を大きく使っている
東洋医学では、出産によって、体を動かすエネルギーである「気(き)」と、体を養う「血(けつ)」を大きく消耗すると考えます。出産での出血で血が減り、長いお産で気も使い果たします。
さらに東洋医学では、母乳は血から作られると考えられており、授乳期間中も気血を使い続けることになります。産後に疲れやすい、腰がだるい、気分が落ち込みやすいといった状態は、こうした気血の不足と関わっていると考えられています。
「産後の肥立ち」と「床上げ」の知恵
日本には昔から、「産後の肥立ち(ひだち)」という言葉があり、産後の体の回復を大切にしてきました。産後3週間ほどは布団を敷いたままにして横になって過ごし、体が回復してから布団を片づける「床上げ」という習慣も、その一つです。
今は、産後すぐから家事や育児をこなす方も多いですが、「産後はまず休む」という昔の人の知恵は、東洋医学の考え方とも重なります。
「腰は腎の府」
東洋医学には、「腰は腎(じん)の府」という言葉があります。腰は、生命力の源とされる「腎」の状態が表れやすい場所という意味です。出産は腎の力も消耗するとされ、産後の腰のだるさや冷えにつながると考えられています。
腎と腰の関係については、こちらの記事でもお話しています。

鍼灸院での産後のケア
施術は出産1か月後から
私のところでは、出産から1か月後から施術が可能です。帝王切開の方や、体調に不安がある方は、医師にも確認しておくと安心です。
最初の3週間を大切にしている理由
最初は、1週間に1回のペースで、3週間ほど通っていただいています。
同じことを21日ほど繰り返すと、脳や体が覚えてくれると考えているため、最初の3週間を一つの区切りとして大切にしています。偶然ですが、先ほどの「床上げ」も産後3週間ほどが目安とされていました。
その後は、体の状態に合わせて間隔をあける
最初の3週間のあとは、2週間に1回、3週間に1回と、少しずつ間隔をあけていきます。どのくらいのペースで通うかは、痛みや不調の状態に合わせて決めています。
自宅でできるセルフケア
寝るときは、膝の下にクッションか横向きで
腰痛や反り腰がある方には、寝るときの姿勢を工夫するようお伝えしています。
- 仰向けで寝るとき — 膝の下にクッションや丸めたタオルを入れて、膝を軽く曲げた状態にする。腰の反りがゆるみ、腰の負担が減りやすくなります
- 横向きで寝る — 膝を軽く曲げ、膝の間にクッションをはさむとさらに楽になります

骨盤サポーターを上手に使う
人によっては、トコちゃんベルトのような骨盤サポーターをご紹介しています。ゆるんだ骨盤まわりを外から支えることで、体を動かしやすくなる方もいます。
使うときは、次の点に気をつけてください。
- 正しい位置に、締めすぎずに着ける(説明書をよく読む)
- 帝王切開の方は、傷に当たらないか確認する
- 使い方に迷うときは、助産師や医師に相談する
合う・合わないには個人差があります。
授乳・おむつ替え・抱き上げの姿勢
- 授乳 — 授乳クッションで赤ちゃんの高さを上げ、自分が前かがみにならないようにする。背中にクッションを当てたり、足台を使ったりすると楽になります
- おむつ替え — 床で前かがみの姿勢を続けず、高さのある台を使う
- 抱き上げ — 腰だけを曲げず、膝を曲げて腰を落としてから抱き上げる
1か月健診のあとから始めたい体操
産後1か月健診で、医師から体を動かしてよいと言われたら、無理のない範囲で次のような体操を始めてみましょう。
- 骨盤底筋の体操 — 仰向けで膝を立て、尿を止めるようなイメージで骨盤の底をきゅっと締めて数秒保ち、ゆっくりゆるめる
- 腹式呼吸 — 息を吐きながらお腹をへこませ、お腹の深い筋肉を使う練習をする
痛みがある場合や、帝王切開の傷が気になる場合は、無理をせず医師に相談してください。
気血を補う食事と、冷やさないこと
東洋医学では、消耗した気血を補うことが、産後の養生の基本と考えます。肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク質や、鉄分を含む食材を意識してとり、温かい汁物を取り入れましょう。授乳中は、水分もしっかりとってください。また、腰やお腹、足元を冷やさないように気をつけましょう。
何より、休むこと・頼ること
産後の体は、思っている以上に回復の途中です。赤ちゃんが寝ているときは一緒に横になる、家事は手を抜く、家族や周りの人、地域の産後ケアなどを頼る。それも大切なセルフケアの一つです。
悪化した場合や心配な場合
次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 発熱がある、悪露(おろ)の量が急に増えた、においが強い、下腹部が強く痛む(産婦人科へ)
- 帝王切開の傷が痛む、赤く腫れている、膿が出る(産婦人科へ)
- 歩けないほど腰や恥骨が痛い、足にしびれがある、力が入らない
- 尿もれが続く、骨盤の中が下がってくるような感じがある
また、片方の足だけが腫れて痛む、息苦しさがある 場合は、すぐに医療機関を受診してください。産後は血の塊(血栓)ができやすい時期と言われています。
心の不調にも気をつけてください。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、赤ちゃんをかわいいと思えない、自分を責めてしまうといった状態は、産後うつのサインかもしれません。ひとりで抱えこまず、産婦人科や地域の保健センター(保健師・助産師)、心療内科に相談してください。

まとめ
産後の腰痛や骨盤まわりの不調は、「骨盤が開いたまま」だから起こるのではなく、骨盤を支える靭帯や筋肉がゆるんでいるところに、育児の姿勢の負担が重なって起こると考えられます。帝王切開の場合は、お腹の傷の回復も必要です。
東洋医学では、産後は気血を大きく使っている時期と考えます。まずはしっかり休み、寝るときの姿勢やサポーターを工夫しながら、少しずつ体を整えていきましょう。体の回復には個人差があります。つらい症状があるときは、我慢せず専門家に相談してください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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