こんにちは、鍼灸師のRyosukeです。
最近来院された患者さんに、
「ここ最近、食欲がまったくわかない」
「大事な会議の前になるとお腹を下してしまう」
というお悩みを抱えている方がいらっしゃいました。詳しくお話しを伺うと、部署異動をきっかけに強いストレスを感じるようになり、そのタイミングから食欲不振と下痢を繰り返すようになったとのことでした。
お腹を腹診すると、脇腹からみぞおちにかけて張りがあり、脈も緊張したような硬さが感じられました。東洋医学的には「肝」がストレスによって乱れ、それが「脾胃(ひい)」、つまり消化器系の働きに影響を及ぼしている状態と判断し、その両方に働きかけるツボを中心に施術を行いました。数回の施術を経て、「以前より食欲が戻って、お腹を下す回数が減った」とお話しくださり、経過を見守っているところです。

今回は、このケースを踏まえながら、脾胃の代表的な病証と、おすすめのツボについてお話しします。
※これから紹介するツボはあくまで臨床上よく使うツボなので絶対に治るとは限りません。本記事では、私がこれまでの臨床経験や専門学校で培った知識をベースに、現代のセルフケアでも広く活用されている代表的なツボを紹介します。
脾胃(ひい)とは
東洋医学でいう「脾胃」は、消化吸収を担う中心的な存在です。食べたものを「気」や「血」に変換し、全身に届ける、いわばエネルギー生成の要となる働きを担っています。この脾胃の働きが乱れると、消化器系の症状だけでなく、全身の気力や体力にも影響が及びます。

代表的な脾胃の病証
肝脾不和(かんぴふわ)・肝気犯胃(かんきはんい)
ストレスや怒り、緊張によって「肝」の気の巡りを整える働き(疏泄作用)が乱れ、その影響が脾胃に及んだ状態です。ストレスがかかると食欲不振や下痢、お腹の張りが出やすい方は、このタイプに当てはまることが多いとされます。今回来院された患者さんも、まさにこのタイプの状態にあると考えられました。緊張する場面で急にお腹が痛むなる、いわゆる「過敏性腸症候群(IBS)」的な症状とも重なる部分が多いタイプです。

脾胃虚弱(ひいきょじゃく)
脾胃そのものの力が慢性的に不足した状態です。食が細い、食後に眠たくなりやすい、軟便になりやすい、疲れやすいといった症状が特徴で、もともとの体質や、慢性的な過労、不摂生の積み重ねによって起こりやすいとされます。

脾胃湿熱(ひいしつねつ)
脾胃に余分な熱と湿気がこもった状態です。口が粘る感じ、口臭、ベタついた軟便、食欲はあるのに胃もたれしやすいといった症状が特徴で、脂っこいものや甘いものの摂りすぎによって起こりやすいとされます。
胃陰虚(いいんきょ)
胃を潤す「陰」が不足した状態です。空腹感はあるのにあまり食べれない、口や喉が渇きやすい、便が乾燥しやすいといった症状が特徴で、慢性的な胃の炎症や、加齢によっても起こりやすいとされています。
施術で使ったおすすめのツボ
太衝(たいしょう)
場所:足の甲、親指と人差し指の骨が合わさる手前のくぼみ。
特徴:太衝は肝の経絡に属する代表的なツボで、気の巡りを整え、ストレスによる緊張を緩める作用があるとされます。肝脾不和のように、ストレスが引き金となって消化器症状が出ているタイプには欠かせないツボです。今回の患者さんにも、脇腹の張りを緩める目的でこのツボを中心に使いました。

セルフケアでの押し方
①足の甲側、親指と人差し指の骨の間を、足首に向かってなぞる
②骨が合わさる手前のくぼみを見つけたら、痛気持ちいと感じる強さで押し込む
③5秒押して離すを5回程度繰り返す
中脘(ちゅうかん)
場所:おへそとみぞおちを結んだ線のちょうど中間。
特徴:中脘は胃の状態と深く関わるとされる代表的なツボで、消化機能を整える作用があるとされています。食欲不振や胃もたれ、消化不良全般に幅広く用いられるツボで、脾胃虚弱タイプの方にもよく使われます。

セルフケアでの押し方
①おへそとみぞおちを結んだ線の中間を確認する
②仰向けに寝て、お腹の力を抜いた状態で、ゆっくり指を沈めるように押す
③「の」の字を書くように、お腹全体を優しくマッサージするのも効果的です
④食後すぐは避け、リラックスできるタイミングで行うのがおすすめです
日常生活で意識したいこと
・ストレスを溜め込みすぎず、発散する時間を持つ。私自身のストレス発散法は軽い運動と寝ることです。
・食事はよく噛んで、リラックスした状態で摂ることで脳への血流が増えて集中力が上がります。
・冷たいものの摂りすぎを控え、脾胃に負担をかけすぎない。お腹を冷やすことで胃腸の働きが悪くなることもあります。
・決まった時間に食事、睡眠をとり、生活リズムを整える。サーカディアンリズムが崩れるとホルモンバランスも乱れてきます。

まとめ
食欲不振や下痢が続くと、つい消化器系そのものだけに目が向きがちですが、その背景にあるストレスによる「肝」の乱れが隠れてきていることは少なくありません。今回紹介した太衝と中脘はどちらも自宅でセルフケアしやすいツボです。ストレスと消化器の不調、どちらも心当たりがあるという方は、ぜひ試してみてください。
我慢できない急な痛みや、手足の痺れ、血便が出るなどの症状が出てきた場合は何かしらの病気が隠れている可能性があるので、自己判断せず医療機関の受診もあわせて検討してください。
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